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【Policy makers lab ワークショップ】日本AED財団 10周年記念シンポジウムに先立つプレワークショップで、次の10年に向けた議論を支援

2026 年 8 月 2 日、Policy makers lab(代表:福岡 功慶、以下「PML」)は、公益財団法人日本 AED 財団(理事長:三田村 秀雄、以下「日本 AED 財団」)が東京都内で開催した設立 10 周年記念プログラムに参画しました。

PML は、同日開催された「日本 AED 財団 10周年記念シンポジウム」に先立ち実施された「プレワークショップ」において、同財団の皆様を対象に、政策提言に関する講義とグループワークのファシリテーションを担当しました。

本企画の実現にあたり、両団体をつなぎ、企画・調整にご尽力下さった皆様をはじめ、関係者の皆様に厚く御礼を申し上げます。


【ワークショップの主旨】

日本 AED 財団は、AED(Automated External Defibrillator の略称。和名:自動体外式除細動器)の普及・啓発・教育及び訓練に関する取組を通じ、心臓突然死ゼロの実現を目指す団体です。2026 年 7 月 27 日に設立 10 周年を迎えました。

同財団は、School、Sports、Social Movements という 3 つの活動領域(3S)を軸に取組を進めており、この節目を機に、これまでの活動を次の 10 年へどのように発展させるかを検討しています。

今回のプレワークショップでは、それぞれの活動を担う School 部会、Sports 部会、Social 部会それぞれの現在地、次の 10 年で目指す姿、今後 3 年程度の活動目標に加え、わが国全体における AED の普及・利活用をさらに進めるため、政策提言に接続し得る領域横断の課題を整理しました。

その成果は、同日夕に開催された 10 周年記念シンポジウムで紹介され、財団関係者によるラウンドテーブルディスカッションへとつなげられました。

今後は、今回整理された論点を追加調査や関係者との協議を通じて精緻化し、PML Journal での政策案発表等につなげていく予定です。

【講義編】

プレワークショップではまず、参加者による全体討議として、問題の構造を明確化する PML のミクロ・メソ・マクロの思考法を体感していただきました。

具体的には
・AED に関わる市民・救護者(個人)が抱える不安
・AED に関わる団体・施設(組織)が抱える不安
・国・社会が抱える不安
について、参加型会議ツールを使って参加者それぞれが持つ所感を取りまとめました。

例えば市民・救護者が抱える不安については、「正しく使えるかわからない」という知識・技能への不安や「使った結果の責任を負いたくない」という法的・心理的リスクへの不安等が明らかにされました。同時に組織が抱える不安については、「管理責任や分担が曖昧」といった運用面での問題や「維持管理コストや法的保護が不十分」といった資源・制度面の問題が聞かれました。組織の抱える不安は国・社会の抱える不安とも共通するものがあり、社会的理解や文化・教育面にも問題があるという意見が上がりました。

- 講義の様子(植野)-

ミクロ・メソ・マクロの思考法は政策案作りメソッドにおける
・STEPⅠ:様々な階層で起きる「問題」の理解
にあたる重要な取組です。特定の見方や利益のみを追求するのではなく社会の全体最適を企図する政策の検討にあたっては、様々な階層で起きる「問題」の解決に資するかを常に立ち返る必要があるためです。

参考としてそれに続いて
・STEPⅡ:あるべき姿の導出に向けた現状の政府取組の確認(現状の政策に対する評価)
・STEPⅢ:あるべき姿と政策課題の導出(STEPⅠで抽出した社会の問題とあるべき姿のギャップ分析)
・STEPⅣ:対応方向性の検討(政策ツールの選定や組合せの方法)
についても、具体的にどのように進めていくべきかの講義を実施しました。

- 講義の様子(坂本)-

【ワークショップ編】

続けてワークショップでは、School 部会、Sports 部会、Social 部会の 3 つの "S" グループに加え、日本 AED 財団全体の活動や政策を横断的に検討する Strategy グループの計 4 グループに分かれ、議論を行いました。

各グループでは PML の講師がファシリテーションを担当し、一部グループでは政策実務担当者にもご参加いただき議論を深めました。

School 部会、Sports 部会、Social 部会の 3 つの "S" グループでは、
・部会としての現在地
・次の 10 年で目指す姿
・今後 3 年程度の活動目標
・活動に必要な連携・支援
・(必要に応じて)政策提言や領域横断的な課題に接続し得る論点
を整理しました。

Strategy グループでは、
・日本 AED 財団全体として取り組むべき政策課題
・目指す社会像
・主なボトルネック
・働きかけの相手
・活用し得る政策ツール
・今後、優先的に検討する政策パッケージの候補
について整理・検討しました。

- ワークショップの様子(1枚目:福岡による Strategy グループのファシリテーション、2枚目:藤川による Sports グループのファシリテーション、3枚目:河野による Social グループのファシリテーション)-


各グループの検討結果については、全体共有の場で他グループに共有され、グループ間で質疑応答や更なるアクションの検討に向けた討議が行われました。

PML は、各グループから挙げられたキーワードをベン図に整理しました。その結果、緊急時対応計画(EAP)、実践訓練、AED へのアクセス、データ基盤、事後検証など、3 部会に共通する基盤や、領域を越えて共同で検討すべきテーマが可視化されました。

この整理を起点として、各部会が主体となる事項、部会間で連携・調整する事項、Strategy グループを通じて領域横断で検討する事項を切り分け、今後の検討体制と役割分担を明確にしていく必要性が共有されました。

最後に PML 代表の福岡より、今回の議論は完成版の政策提言を作る場ではなく、日本 AED 財団の次の 10 年の活動目標と、政策提言に接続し得る領域横断課題を整理する出発点であることを改めて共有しました。その上で、PML としても引き続き検討をご支援させて頂く旨を申し上げました。

- wrap upの様子(福岡)-

【評価】

研修にご参加いただいた皆様からは、本研修に対して高い評価をいただけました。

ワークショップ全体の総合評価は 5 点満点中平均 4.64 点で、全回答者より 4 点以上のご評価をいただきました。また、「プレワークショップは新たな気付きにつながったか」という質問についても、平均 4.64 点となりました。

良かった点として、回答者全員が「同じ部会の参加者との情報交換の場になった」ことを挙げました。

このほか、
・部会を横断して考えるべきテーマが明確になった:8名
・政策議論につなげる際のコツ・ヒントをつかむことができた:8名
・政策ツールの種類と使い分けについて理解できた:7名
といったご評価も頂きました。

アンケート回答者数[N=11]


その他にも「新しい視点を得ることができ、普段抱えていた課題が整理され、今後の活動の方向性が見えてきました」といったご評価も頂戴できました。

【プレワークショップを振り返って】

三田村秀雄 様(日本AED財団理事長)コメント

日本AED財団の活動は設立当初より、医療職に留まらず、教育、スポーツ、メディアその他様々な分野の叡智を結集して、All Japan体制で臨むことが重要と考えてきました。10年が経過し、社会へのそれなりの貢献はできたと自負しているものの、まだ課題は多く、さらなる挑戦が不可欠です。10年間、ほぼ同じメンバーと共に実行委員会を中心に議論を戦わせてきましたが、そのまま自分たちがEcho Chamberに埋もれかけている可能性を危惧していました。今回、PMLという外部の方々からの新鮮なご指導、ご助言をいただき、短時間のbrainstormingではありましたが、改めて反省点や今後の方向性が見えてきた印象を持ちました。この機会を是非、財団の次の10年に向けた飛躍の一歩にしたいと期待しています。

福岡 功慶 コメント

三田村理事長はじめ財団の皆様のAEDを通じて多くの命を救いたいという熱い思いに接し、本当に素晴らしい取組だと実感しました。今回のワークショップを通じ、その思いを仕組みや制度にしていく際のスタートラインに立つことができました。具体化に向け、引き続きサポートさせていただきます。

植野 剛 コメント

日本 AED 財団の皆様と議論する中で、AED による救命は、個々の市民の知識や勇気だけで成り立つものではなく、平時からの教育・訓練、緊急時対応計画(EAP)、AED へのアクセス、データの活用、事後検証までが一つの仕組みとしてつながってこそ、実際に救える命を増やせるのだと改めて感じました。今回、School、Sports、Social という異なる現場で培われた知見を持ち寄り、共通する課題や領域横断で取り組むべき論点を可視化できたことには、大きな意義があったと考えています。ワークショップで得られた気付きや構想を一度きりの議論で終わらせず、具体的なアクションへ落とし込み、実装し、その成果を検証しながら改善していくことが重要だと考えています。今回の協働・共創をつないで下さった皆様への感謝とともに、この機会が日本 AED 財団の次の10年の確かな出発点となるよう、引き続き共に取り組ませて頂きたく存じます。

藤川 葵 コメント

日本AED財団の皆様とのワークショップに参加し、救命の現場を支える知恵と努力を深く学ぶ機会となりました。Sports部会では、AED設置にとどまらず、プロから学生スポーツに至る全競技大会での「EAP(緊急時対応計画)」普及が10年後の目指す姿として明確に示され、非常に有意義な議論が交わされました。実装に向けては啓発だけに頼るのではなく、調査を通じて階層別のボトルネックを可視化し、行政への働きかけと民間主体の取り組みを適切に整理・連携させていくことが重要であると実感しております。提言取りまとめに向けて微力ながら貢献してまいります。

平山 貴一 コメント

School部門の皆様との議論を通じて特に印象に残ったのは、それぞれの活動の背景に強い原体験や想いがあり、それがすでに具体的な実践につながっていることでした。また、その実践を一部の熱意ある人だけのものにせず、学校や地域の一人ひとりにいかに「自分ごと」として捉えてもらうか、というテーマが議論されたことにも大きな意義を感じました。すでにある制度や仕組みの中で何を活用できるのか、どこを変える必要があるのかを整理しながら、皆様の想いと実践をより広く、持続可能な形で届けていく方法を共に考えることができたことは、私自身にとっても大変貴重な機会となりました。今回の議論が、学校での救命教育をさらに広げていく一歩につながればと思います。

河野 勝紀 コメント

日本AED財団のみなさま、プレワークショップに参加させていただきありがとうございました。日本AED財団のみなさまが並々ならぬ熱い思いを持って活動されていることが分かり自分自身としても非常に刺激になりました。一方で、現場で熱い思いを持っていても、制度・構造上の問題で上手く行かないこと、モヤモヤした思いを抱くことがあるかと思います。そういった問題を解決する一つの手法が政策です。しかし、私を含めた民間の多くの人々は政策に関する議論や特有のニュアンスが分かりにくいケースがあります。我々PMLではそうしたギャップを解決するため官民の有志が現場に根差した政策案に取り組んでいます。今回のプレワークショップでは一部ではありますが、そのエッセンスを共有できた手応えを感じました。引き続き日本AED財団のみなさまと建設的な議論を続けていきたいと思っていますので、宜しくお願い致します。

坂本 雅純コメント

まず日本AED財団の皆様には、今回このような貴重な機会をいただけたこと、心より感謝申し上げます。今回のプレワークショップのプログラムは時間の制約上どうしても過密になってしまいましたが、皆様のお取組や熱意を拝見することができ、当方個人としても幸せな時間でした。政策案を作り、政策として実現していくには、エビデンスや想いに加えて「技術」が必要です。ミクロ・メソ・マクロの思考や政策ツールの使い分けなどの講義やグループワークでの議論を通じて、プレワークショップが皆様にとって政策やその「技術」を再発見していただけた機会となっていましたら、そして日本において AED の普及活用が進んでいくことに貢献させていただけたとしたら、講師としてこれ以上の幸せはありません。

【今後に向けて】

医学・医療の世界では、「小医は病を治し、中医は人を治し、大医は国を治す。」という言葉があります。この言葉は物事を様々な角度から不断に捉え直す姿勢の大切さを示すものでもありますが、これはもちろん医療の世界に限った考え方ではありません。政策案作りでも、当事者だけでなく、周囲の人や地域、将来世代まで含めて「誰に何がどう影響するか」を考えることが必要です。そうした思考を通じて「パブリックマインド*」を醸成することが、自分は社会の中でどう生きたいのか、どんな選択をしたいのかを考え直す良いきっかけとなります。

Policy makers lab は官民の有志により現場に根差した政策案作りに取り組んでまいりますが、(自治体様を含む)政治家や行政官の皆様への政策案作り研修に加え、スキルアップのための社会人向けパブリックマインド醸成研修や、学校現場での政策案作り体験教育のお手伝いも実施させていただきたいと考えております。ご興味・ご関心をお持ちの皆様は、下記担当までお気軽にお問い合わせください。

担当
Policy makers lab 事務局 坂本 雅純(SAKAMOTO Masazumi)
policy.makers.lab@gmail.com

* Policy makers lab における「パブリックマインド」とは、社会問題・課題に気付いたとき、それを見て見ぬふりせずに「自分ごと」として捉え、他者の視点にも想像力を働かせながら、公共のために思考し、行動する姿勢を指します。

これは、既存の英語概念である civic mindset(市民的思考態度)や sense of civic responsibility(市民としての責任感)、public-spiritedness(公共心)とも通底するものですが、単なる関心にとどまらず「気付くことができたのであれば行動する」という自発的実践性に重きを置いている点が特徴です。

なお、英語における "public mind" という表現は「世論」「大衆の心理」などを意味する別の概念となります。