― エビデンスの読み方と、政策を考える「5つの問い」を講義・グループワークで実践 ―
2026 年 10 月 6 日、奈良市議会棟において、奈良市議会議員・市職員の皆様を対象とした EBPM(Evidence-Based Policy Making:エビデンスに基づく政策形成)勉強会「その政策、エビデンスは?」が開催され、Policy makers lab(代表:福岡 功慶、以下「PML」)Managing partner の植野 剛が講師として登壇しました。
本勉強会には、会派を超えた市議会議員と複数部署の市職員の皆様が参加され、EBPM の基本的な考え方についての講義に加え、具体的な自治体の政策事例を題材としたグループワークを実施しました。議員と市職員がそれぞれの立場や経験を持ち寄り、政策について共に考え、議論する機会となりました。
本勉強会を企画・調整頂いた奈良市議会議員の松尾 浩司 様をはじめ、ご参加頂いた皆様に厚く御礼申し上げます。
【勉強会の主旨】
EBPM とは、データや研究知見などのエビデンスを政策形成に活用する考え方です。しかし、エビデンスのみで政策の「正解」が自動的に決まるわけではありません。
実際の政策判断では、データや研究知見に加え、市民から直接届く声、議員や行政職員が現場で得ている経験、公平性、財政、実現可能性など、さまざまな情報や価値判断を考慮する必要があります。
そこで本勉強会では、エビデンスを「政策の答え」ではなく、より良い判断をするための重要な材料の一つとして位置づけました。
また、議員と行政職員の皆様が、立場や役割の違いを越えて、
・何が分かっているのか
・何がまだ分からないのか
・そのエビデンスから、どこまで言えるのか
を共有するための「最低限の共通言語」をつくることを、本勉強会の一つの目標としました。
【講義編:数字とエビデンスをどう読むか】
講義の前半では、
「類似する3自治体では、制度導入後の費用は平均6%増でした。」
という一つの情報を題材に、この数字だけから政策判断を行うことができるのかを、参加者の皆様に考えていただきました。
「どのような自治体を対象としているのか」「対象数は十分か」「いつ、どのくらいの期間を評価したのか」「何と比較したのか」「何をもって『良くなった』と評価したのか」など、数字そのものを見るだけではなく、その数字がどのような問いに答えているのか、そして何には答えていないのかを確認することの重要性を共有しました。
- EBPM の基本的な考え方についての講義 -

さらに、複数自治体における政策事例を通じて、エビデンスの強さだけでなく、費用、公平性、実現可能性、他の政策選択肢なども含めて政策を考える必要性について解説しました。
最後に、政策を検討する際に繰り返し立ち返る問いとして、以下の 5 点を提示しました。
1. 何が問題?
2. 何を根拠にそう考える?
3. その根拠からどこまで言える?
4. 他の選択肢は?
5. やった後、どう確かめる?
- 本勉強会で提示した「政策を見る5つの問い」-

【グループワーク編】
後半では、奈良市と他自治体の子育て施策を題材に、グループワークを実施しました。
参加者の皆様には、講義でご紹介した「政策を見る 5 つの問い」を手掛かりに、政策が対象としている問題、根拠となる情報、他の政策選択肢、実施後の評価方法などについてご議論いただきました。
市議会議員と市職員が同じ場で、それぞれの立場や現場経験から意見を出し合うことで、一つの政策についても異なる視点から問いを立てられることが共有されました。
- グループワークの様子 -

【評価】
勉強会終了後には、参加者の皆様にアンケートへご回答いただき、22 名から回答を得ました。
EBPM についての理解度を、終了後に「勉強会参加前」と「現在」について振り返って自己評価いただいたところ、22 名中 19 名が、参加前より現在の理解度を高く評価しました。
また、
「今後、政策や行政資料を考える際に活用できそうですか?」
という質問については、5 段階評価で平均 4.32 点となり、22 名中 19 名が 4 または 5 と回答しました。
※理解度については、終了後に参加前の状態についても振り返って回答いただいた自己評価であり、本勉強会による理解度の変化を客観的・因果的に評価したものではありません。
- 終了後アンケート結果(n=22) -

【勉強会を振り返って】
【植野 剛 コメント】
今回特に印象的だったのは、会派の異なる議員の皆様と、複数部署の市職員の皆様が同じ場に集まり、それぞれの立場や経験を持ち寄りながら、活発に議論されていたことです。
議会と行政では担う役割こそ異なりますが、住民にとってより良い政策を考えるという目的のもと、共に学び、議論することには大きな意義があると感じました。
また、勉強会終了後には、政策実施後の評価だけでなく、そもそも何を問題として捉え、政策を始める前に何を調べ、どのような評価指標を設定するのかという、政策形成のより上流の論点についても意見交換が続きました。
今回の勉強会が、それぞれの立場で日々政策形成に取り組まれている皆様にとって、エビデンスをより良い政策判断につなげる一助となりますれば幸いです。
- 勉強会終了後、企画・調整にご尽力いただいた松尾 浩司 奈良市議会議員と植野 -

【メディア掲載】
本勉強会の様子は、2026 年 10 月 11 日付の奈良新聞の 1 面トップにおいて、「奈良市会 超党派で知識磨く」との見出しで紹介されました。
奈良新聞「奈良市会 超党派で知識磨く」2026.10.11
【今後に向けて】
PML では、現場の問題意識を起点として、エビデンスや多様なステークホルダーの知見を政策形成へ接続するための方法論について、実践を重ねています。
今回の勉強会でも、政策実施後の効果検証に加え、問題設定、問いの立て方、政策実施前の情報収集、アウトカム・KPI の設定など、EBPM を実務で活用する上での次の論点が参加者との議論から示されました。
今後も PML では、自治体を含む政策形成の現場において、政策立案・エビデンス活用に関する講義やワークショップ等を通じ、より良い政策形成に向けた取組を支援してまいります。
ご興味・ご関心をお持ちの皆様は、下記担当までお気軽にお問い合わせください。
【担当】
Policy makers lab 事務局 坂本 雅純(SAKAMOTO Masazumi)
policy.makers.lab@gmail.com
